離島トカラに生きた男 第2部

仕事のめどがついた(終わったわけじゃないけど、、)ので、ネットで手に入れた第二部を読みました。
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このおじいさんは、戦後のある時期、完全に狂人となり、周りも本人も危険だという事で座敷牢に6ヶ月監禁されます。
牢には、毎日いろんな神様や生霊がやってきて、おじいさんに話しかけ、おじいさんをあやつります。
訪れた神々は種々雑多。
河童、稲荷、天皇陛下、軍政官(当時まだアメリカ軍の占領下にあった。)、ソ連兵士の霊、朝鮮のアメリカ軍の霊、朝鮮の白頭山の神、村長の生霊、伊勢の朝熊山の神、祖先の霊等。
食べ物の芋までもが、おじいさんに語りかけるので、食事を取ることもままならず、夜も眠れず弱り果てます。
そのうち、氏神である朝熊山の神から、壁板を割って剣を作ることを教えられ、おじいさんは、ベニヤ板で剣(と自分は思っているが、ただの木切れ)を作って、それで悪霊を追い払い、やっと安眠できるようになります。体力が回復するにつれて、正気をとりもどし、牢から出ることができますが、まだ悪霊がとりついているので、朝熊山の神に指示された握り飯を使った儀式で呪いを解き、写経をすることによってついには正気を取り戻すのです。
精神科の医者がいるわけでもなく、薬があるわけでもなく、自分の強い意志と、奥さんの援助だけで狂気の世界から脱出します。(昭和27年頃)
その後、開拓農民達をとりまとめて、開拓農協を設立しようとするが、対立している村は書類作成に協力してくれない。おじいさんは直接鹿児島県に働きかけて、自力で書類を作り、ついに開拓農協を設立します。
そして、農協の組合長兼書記として、多くの困難と闘い、のちには村会議員にもなり、開拓農民のために活躍します。
開拓農協についてのお話は第三部で書かれる予定でしたが、出版されなかったようです。
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無名の一人の老人の人生だけど、戦争という歴史、離島という特殊な環境が織り込まれた読み応えのある本でした。
3部も読みたいなあ。。きっと原稿は作ってあるんでしょうに。
著者の中野卓さんは、
出版(1982年)当時、千葉大学文学部行動科学科社会学講座教授
だったらしい。今は何してるのかな?
「続きが読みたいです。読ませてください。」って手紙書きたいくらい。