エビス

といってもビールの話ではなく。。
実家の床の間にえびす様の置物があります。
3つ重ねの俵の上に座ったにこやかなえびすさまは、片手に鯛のかかった釣り竿を持ち、そしてもう片方の手は打ち出の小槌ごと失われている。
今は死んだおじいちゃんからエビスさまがウチに来たいきさつを聞いたことあります。
それは戦後すぐ頃、大きな台風が来た時の話。
近くの堤防が危ないと聞いたおじいちゃんは、畳を上げて、家族を避難させた後、家中の雨戸、襖、障子をはずして柱だけにした屋敷を守るために、一人で残っていたのだそうです。
そして堤防は決壊。どんどん水位が上がり、家の中に物を積み上げてその上に座っているおじいちゃんの側をいろんな物が流れて行きました。
いろんな家財道具、中には生きている豚も鳴きながら流れていったそうです。かわいそうだがそのまま流したと。。そのなかで、えびす様の陶器の置物が割れもせずぷかぷかと浮いていたそうな。
おじいちゃんはひょいとその黒光するえびす様を拾い上げ、それ以来床の間に置いてあるということでした。
おじいちゃんと一緒に寝ると、いつも寝物語にそんな話をしてくれていたので、今では本当にその場にいたような気がするほどです。
「エビス様助けたけど、打ち出の小槌がないから金持ちにはならんかったな。。」とじいちゃん笑ってた。
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なぜそんな話を思い出したかというと、深夜「ゴーストハント」っていうアニメを見たからです。
このアニメの原作は『十二国記』を書いた小野不由美。
民俗学的なエピソードもしっかりと調べられ、ストーリーもしっかりしてて、なかなか面白いミステリー仕立てのホラーマンガ。小説としても書かれてるらしい。
マンガ版ゴーストハントの中でエビス神が出てくる回がありまして、そのときに私の中で長年不思議に思ってた疑問が解けました。
「えびす」は今は七福神の中の幸運をもたらす神様として知られているけど、もともとは外来の者を意味する。
夷、戎、胡、蛭子、恵比須、恵比寿、恵美須などとも書く。
異邦より村に時たま訪れる外来の神であり、海の向こうからやってくる水の神である。
漁村では近年までイルカやクジラなどをえびすとよんだり、水死体のことをえびすとよんだりする地域もあり、漁のときに水死体を拾うと大漁になるという信仰もあるという。(Wikipediaより)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%88%E3%81%B3%E3%81%99
なぜ拾ったものを床の間に置いてたのか。。
海辺で育ったおじいちゃんの認識として、
 えびす様=流れてくる水の神
 荒ぶる神=大切に扱えば、ラッキーをもたらす神
という考えがあったのかもしれません。
アニメ版「ゴーストハント」が、遠い記憶を掘り起こしてくれました。